「松岡ぁ、この資料頼む。」

「はい、わかりました。」







-----あれから1ヶ月。




会社のオフィスでは
前と変わらない生活が続いていた。








「サユリはもう松岡じゃないでしょ?」







何でまだ松岡呼びなの?




とマユコちゃんが
私を見上げながら

疑問そうにそう口にした。







「だって皆、その方が間違えなくて済むでしょ?」







それに何だかんだ
私もその方が慣れてるし。




と言えば

マユコちゃんが納得いかないといった様子で
私を見る。








「私は結婚したら
絶対苗字変えたいけどなぁ。」






だって好きな人の姓だもん。



と可愛らしく拗ねる顔をするマユコちゃん。

うんうん、さすがこれぞ女子。







(酒井くんこれ聞いたら喜ぶだろうなぁ。)






なんて思いながら
目の前の可愛いマユコちゃんを見て思う。



別に私は苗字にこだわりないから
特に気にしてないんだけど…。





そう思いながら
私は律樹に頼まれた資料の
コピーを取る。



…そっかぁ…普通は苗字にこだわったりするものなのかぁ…。






(でもまぁ…会社以外では苗字違うし。)






会社だけだから
別にいっか、という感じで

やはり私は特に気にしていなかった。







「…はい部長、資料です。」

「あぁ、ありがとう。」







この人も相変わらず

会社の中では王子キャラだし。





結婚したからって
特に何か変わったことなんてない。







「……あ、そうだ松岡。」

「? はい?」







不意に
部長からそう呼び止められる。


私は足を止めて
彼を振り返った。







「何ですか??」

「あ…その……、
今日は 外食しよう。」






だから、今日は予定入れんなよ。








何だか少し照れ臭そうに
優しく口元に笑みを浮かべて言う。


そして私に背を向けて、そのまま
資料を持ってオフィスを出て行った。







(はは…今更何を照れてんだか。)






と私は彼の様子が少し可愛くて
クスッと笑う。





…外食かぁ、意外と久々かも。