「ちょっと!お父さん急いで!
…っ、遅い走れ!!」
「っ、尋美が早いんだよ!」
正装に身を包んだ
夫婦が、忙しく走っていて
男の方は息を切らせながら
女を追いかける。
------バンッ!
「サユリー!来たわよー!」
そう言った女の先には
純白の綺麗なドレスに身を包んだ
今日人生最高の幸せを迎える
1人の、女の子。
「あぁお母さん。
…と、お父さん。」
「はぁ、はぁ…尋美走るの早いんだよ…。」
私の前には
キラキラとした目で私を見るお母さんと
その隣で息を切らせて
腰を屈めるお父さんがいた。
どうせお母さんが慌てて走るのに
お父さんが付き合わされたんだろう。
「ったく…父さんと母さん、慌てすぎ。」
「あ、お兄ちゃん。」
そこに後からお兄ちゃんが合流。
3人とも滅多に見ない正装をして
私のドレス姿を見に来ていた。
「あら、律樹くんは?」
「律樹も今頃準備じゃない?」
両親来てるのかもしれないし、
と私が言えば
お母さんが「あぁ〜!」と何やら思い出すように笑った。
「この前婚前旅行で
家族総出で行った時に会ったでしょ?」
「覚えてるわよちゃんと。
美人なのにツンデレの奥さんとお姉さんね!」
-----そう
あれからあの意地悪なお母様とお姉様は
お父様に相当厳しく咎められたのか
以前会った時とは比べものにならない程
大人しくなっていた。
まぁでもやっぱりツンツンしてるから
お母さん的には
ツンデレだと思ってるみたいだけど。
「お姉さんもすごい美人さんなのに
まだ独身なんて、世の中どうなってるのかね〜。」
と不思議そうなお母さんに
私は思わず苦笑い。
…まぁ前までが酷かったからねぇ、
なんて考えてしまう。
事実だから仕方ないんだけど。
「あ、そうだお父さん!写真とって!!」
「あ、俺もよろしく。」
「えぇ?!お父さんだけ写れないのか?!」
お母さんから手渡されたカメラを持ちながら
おいー!と言うお父さん。
ちゃっかりお兄ちゃんも私の隣に立つ。
------コンコン、
そんな時に
タイミング良く扉にノックがされる。