まるで見せつけたいというように

律樹はその手を離さなかった。





…やっぱり不安なのかな?





そう思いながら
私は彼の意思に従うように
手を握り返しながら歩いていく。





おーちゃんが予約したお店は

駅から少し歩いた所にある
イタリアンのレストランだった。



…しかも


見覚えがある。








「……え、ここって…!」

「…叔父さんの店だな。」

「え、マジで?!」







おーちゃんは何も知らなかったらしく

ただ人気だからという理由で
たまたま予約したらしいそのお店は


なんとあの時律樹と来た
イタリアンレストランだった。






(…まさかの2度目の来店が
挨拶より先にこんな形になるなんて…。)





と心で思いながら
私は思わず苦笑いをする。







「ここ身内の方が経営してるんですか?」

「えぇ、叔父がやってます。」

「へぇ…すごくオシャレなお店ですね。」







陸也くんと律樹が
そんな会話をしながら

扉を開けて
レストランの中へ入る。



私とおーちゃんも後を追って
店内へ入った。







その頃になって
やっと繋いでいた手を離した。







「いらっしゃいませ…って
また来てくれたのか律樹。」

「まぁ、たまたま…。」

「…あ、それにあの時のお嬢さんも。」







そう言って私たちの接客を担当したのは
またもあの店長さんだった。


私の顔を見て

覚えていてくれたらしく
どうも、と挨拶をされる。







「何、今日は2人じゃなくて友達も?」

「はい。俺の友達がここ予約してくれたみたいで。」




偶然なんすけど、

と小さく笑う律樹に

律樹の叔父さんは
そっかそっか、と優しく笑って

こちらへどうぞ〜と案内してくれた。






正方形の机に
それぞれ4人座る。






「じゃあ決まったら声かけてください。」






そう笑顔で言ってから
彼はまた厨房の方へ去って行く。



メニューを開きながら
それぞれ食べるものを決める。





(この前はラザニア食べたからなぁ…。)






今度はパスタにしようかと思って
パスタの欄を見ていると

隣に座っていた陸也くんが

私の方へ身を乗り出して尋ねてくる。






「サユリ決まった?」

「え…ううん。まだ決まってないよ。」






隣を見れば

思った以上に至近距離で話していたので
ちょっと驚いて上手く距離を取る。



アメリカ行ってたから

あんまりこういうの抵抗ないんだろうなぁ
と考えながら

私はまたメニューに視線を戻す。







「…これにしようかな。」







そう言って私がメニューを差し出して指をさせば

陸也くんも






「ちょうど俺も今それにしようと思ってた。」






と小さく笑って私に言う。


その笑顔が昔と変わらずかっこ良くて
思わず不意にドキッとした。


一瞬だけどね。








「ダーリン何にするぅ??
私これがいいなぁって思うんだけどぉ?」

「っ…気持ち悪ィ、近寄るな!」






そんな私たちの向こうでは

おーちゃんがふざけながら律樹に絡み
律樹は相変わらずドライに対応。




そんな2人を見ながら
私はクスクスと笑う。






(あんな態度でも、何だかんだ
律樹っておーちゃん好きなんだもんなぁ。)





つくづくツンデレっぽいなぁ
と込み上げてくる笑いに

私はまたクスクス笑った。







「………。」








そんな私を

隣の陸也くんが静かに横目で見ていた。