「…悪かった。本当に。」

「ううん…大丈夫。」







帰りの道で
そんな言葉を交わしながら

私たちは歩いていた。







「……お父さん、すごい怒ってたね。」

「…俺も初めて見た。
すげぇスカッとしたし。」







そう言った律樹が


そっと
手を引いていた私の手を握りしめて


隣にいる私の方を向いて 言う。









「…お前は教養もあるし
ちゃんと品も、女らしさもあるよ。」

「………。」

「それにお前は優しいし
気も使えるし、しっかりしてる。」







まりなさん達に言われたことを
否定するように
律樹がそんな言葉を私に言ってくれる。


普段は絶対言わないし

恥ずかしがっているけど


私を慰めようと
彼なりに頑張ってくれているのを感じた。








「…それに、お前は可愛い。」

「…っ!?」







そう言って
律樹は私の手を恋人繋ぎに変えて

さらにギュッと握った。




私は思わず不意で
ドキッとしながら


彼を見上げた。









「…サユリが1番可愛い。」









そう言って優しく微笑んだと思えば



チュッ…と 一瞬

唇を重ねてきた。










「っ…な、なな…!」

「はは、顔が赤いですよ?サユリさん。」








余裕の笑みを浮かべて
真っ赤になっている私をそう言ってからかう律樹。


くそぅ…しかもちゃっかり王子口調で…。










「…律樹の意地悪。」

「意地悪?どこが?」

「からかってくるところ。」

「お前もからかわれんの、好きだろ?」








そう言って意地悪な笑みを浮かべながら

私の顔を覗き込んでくる。






---知らないうちに

もう先ほどまでの落ち込んだ気持ちは忘れていて






彼と一緒に話すことに
夢中になっていた。









「好きじゃないですー。」

「ふーん?
…じゃあ俺のことは?」

「…好き。」

「はは、素直でよろしい。」







そう言って笑った後に

2人で歩きながら




彼も「俺も好き。」と言ってくれた。









(まったく、バカップルみたい。)






だけど


割と幸せかも。