「自分の弟の恋人を
お前が貶す権利はない。

彼女に無礼な態度を取り続けて
お前は何様のつもりなんだ?

何が楽しい?言ってみろ。」








そう言いながら
お父様は冷たい視線をまりなさんに降り注ぎながら


彼女を見下ろして


鋭い表情で、淡々と告げる。









「つけあがっているのはお前だ。

恥を知れ。」








そう言い捨てて


それからスッとその視線を
お母様へ移される。



お母様はそれにビクッと体を震わせながら

黙って彼を見上げていた。











「…お前もだぞ奈緒。

手本になる親が何をしてる?
みっともない。

…恥をかいているのは自分達なんだと
さっさと自覚をしろ。」










鋭く睨むお父様に

ただ2人は はい…と
静かに返事をするだけだった。









そしてお父様は

立ち止まって目を見開いている私に気づいて



今とは変わって
優しい笑みを浮かべながら









「恥ずかしいところを見せてしまったね。
数々の無礼、本当に申し訳ない。

今日はもう律樹と帰って ゆっくりするといい。」









悪かったね、と


そう眉を下げながら困ったように笑って

そのまま軽く頭をさげられた。







「あ、やめてください!そんな…!」

「この者たちに変わって詫びよう。
本当に申し訳ない。」








そう言って深々と頭を下げるお父様に

私は慌てて大丈夫ですから、と言うが



気が済まないのか、なかなか頭を上げなかった。

そしてそれから頭を上げて
律樹に視線を向けた。







「…サユリ、帰ろう。」








それが合図と受け取ったのか

律樹が私に話しかけてくる。






私は「あ、うん…。」と返事をして

彼のところまで歩いて、
そのまま手を引かれるまま

お店を後にした。