「………!」

「っ…ご、ごめんなさ…。」

「…少し席を外そう。」








さすがにこれには驚いたのか


今まで黙っていたお父様が
私を見て驚いていた。




そりゃ、突然泣かれれば
驚きもするだろう。







律樹は私を立たせて
私の肩を抱きながら


席を立って、お店を出た。









「…大丈夫か?」

「っ…ご、ごめん…
すぐ、治まると思うから…。」









そう言ってハンカチで目を押さえながら

込み上げてくるこの
入り混じる感情を止めようとした。









「無理はするな。
…何なら、今すぐに帰ってもいい。」









そう律樹は私に言って

泣き続ける優しく私を抱きしめて
静かに背中をさすってくれる。






きっと彼は私が泣いている理由を察しているだろう。







(…ごめん、ごめんね律樹…。)








こんな弱い部分を
見せるつもりはなかった。



彼にこんなことをさせる気も
こんなことを言わせる気もなかった。



だから今すぐ普通に戻りたいのに








彼の優しさを感じてしまって



それが心を癒すように

弱みがどんどん溢れてくる。







---全て 甘えてしまいたくなる。








そんな風に思いながらも
必死に自分を立て直そうとして

ゆっくり深呼吸をする。








(…大丈夫、大丈夫。)








そう言い聞かせながら
呼吸を整えて




少し経ってから涙は止まった。





そして 律樹の腕の中から離れる。









「ごめんね、ありがとう。…戻ろう。」

「…いや、やっぱりもう」

「大丈夫だから。…戻ろう。」








このまま帰ろう、と言いかけた律樹を
止めるように言葉をかぶせる。





…まだ 負けてられない。