「…おかえりなさい。」







お母様は私たちにそう告げて

食事を再開させる。




私は律樹の隣に座って

黙って料理を口に運ぶ。







-----これは、割ときついなぁ…。








弱音を吐くようだけど



少々、メンタルが痛む。







教養がないとか
品がないとか



確かに自分でも自覚はあるし

そもそもそれがある
家にも生まれていないのも事実。






女性らしくない…のも知っている。








(知ってるけど、でも……)








-----いざそれを言われてしまうと、結構傷つく。






それが彼との関係の妨げになっているのなら 尚更-----。









「-----サユリ。」

「!!
は、はい…!」

「…食べないのか?」








(え?…あ………。)









自分のはそれなりに食べ進めていたが


迷っていた彼が頼んでくれた
もう1品を、まだ食べていなかった。





わざわざ律樹が
私に食べろよ、と差し出してくれる。








「…ありがとう。」








そう言って彼に笑いかけ

それを口に含んだ。






…美味しい…のに。







どうしてこんなに…感動を味わえないんだろう。










食べて確かに旨味を感じるけれど


どうもそれを表現できるほどの
元気がいつものように

パッと出てこない。








「…サユリ?」








そんな私に違和感を感じた律樹が

声をかけてくる。









-------そして











「……っ!」











律樹が私の顔を覗き込んで

目を見開いた。












「……っ…あ……。」










そこでやっと



自分の頬を流れる熱に

気がついた。