---そして、お昼休み。






社内全員に広まったおかげで

2人で食事をしていても
周りに何かを言われることはなくなった。



これはこれで楽だな。









「それで、話って?」






と、目の前で社内食を食べるサユリが
俺に尋ねてくる。



…言いにくい。




結婚を考えているとはいえ
こんな急速に話が進むと

さすがにこいつもうんざりするんじゃ…




なんて思いながら
目の前のサユリをもう1度見る。







「……?」








本人はこんなことになっているなど
微塵も思っていないだろう。


呑気な顔をして、不思議そうに俺を見ている。









「…いや、あのな…。」

「うん?」

「…親父が…というか家族が…
お前に会いたがってて…。」

「うん?」

「……その…
家に連れてこいって言われてんだけどさ…。」







と、親父からメールが来たことから
社内の誰かから聞いて知ったことやら

事情を一通り説明した後




悪い、さすがに早すぎるよな。
嫌なら俺から断っとくから。





と俺が言葉を付け足せば
サユリは即答で







「いいよ別に。」








と言った。





(やっぱそうだよな、ここは俺から断…え?)






俺は頭に響いた言葉に
1度目を丸くしながら
サユリを見直す。



え、お前今いいって言ったか。








「いいよ、会うよ。
これだけ広まってるんだったら尚更。」








バレちゃったなら仕方ないし
どうせいつかは挨拶しないといけないし。




とサラッと承諾したサユリ。





…何かお前、女にしては勇ましいよな。








(……これ、普通立場逆だよな…。)








俺がむしろ先に挨拶しに行く立場のはずなんだけどな…



と変な違和感を覚えつつ

仕方ない、と受け入れる。








本人の承諾は得られた。




あとは…お互いの予定を合わせるだけ。