病院に着き、急いで部屋に向かう。

部屋に真美がいない。

看護婦に聞くと、もう生まれる直前らしく、分娩室に案内された。

もう施術は始まっていて、真美が頑張っているのが見える。 

鼻から西瓜をひねり出すほどの痛みと言うのを聞いたことがあるが、想像もできない。

あ!頭が見えた!頑張れ!頑張れ真美!声に出して応援した。あと少しだ!そう!そうだ!

男の子か女の子か…
楽しみだ…。男の子だったら一緒にキャッチボールとか、サッカーとかやりたいな。
女の子だったら…なんだろう、よく思いつかないがどっちでも楽しいだろう。
あぁ楽しみだ。

真美の悲鳴が聞こえる。

いや、そんなことを考えている暇ではない。新しい生命が、私たちの遺伝子を受け継いで今、この地球に生まれようとしているのだ。
母体の痛みは計り知れないほどだろう。
早く生まれてくれ!その顔を見せてくれ!真美を痛みから解放してくれ!早く!早く!
ハナが来たときの真美の姿が頭をよぎった。
暗闇を覗いていた眼球が開いた瞼から真美に向かった。その瞬間。

ズルンという擬音語を響かせながら、
オギャー‼オギャー‼

生まれた…。

「元気な男の子ですよ!」

何度か見たことのある決まり台詞に気が向きながら、新しい家族の誕生を心から喜んだ。
真美も無事だ。