そう思った頃には、もうフェンスを越えていた。

たいして変わらないのに、たった1歩分の違いしかないはずのフェンスの中と外とでは、酷く世界が変わって見えた。

なんだか、今の方が自由な気がした。

空を見上げれば、澄み渡った青空に似つかわしくない黒いカラスが飛んでいる。

カラスがここにいても、ここから飛んでも、誰も何も心配しやしないのに、なぜ人間には許されないのだろう。

なぜ“死んでしまう”のだろう。

もしかしたら、飛べる人もいるかもしれない。

俺にはできたりして。

あー、あほらし。

そう思う頃には、どんどんと淵の方へ寄っていた。

下を見下ろしてみた。