「ねぇ、希って嘘つくことある?」

希は良くも悪くも正直だ。

自分の欲望のままに動き、言葉を発する。

だから安心する。

希の言葉を信頼出来る。

でも、希だって人間だ。

嘘くらいつくのだろうか。

「つくわよ。」

サラリと答えた。

あまりサラリと答えられたから、急に不安になってきた。

「え、俺にもついたことある?」

「あるわよ。」

即答だった。

「...なに?どれが嘘だったの?」

少し恐かったが、聞かない方がもっと怖かった。

「例えば、今日は授業出てない...とか。」

明らかに尻すぼみの声で弱々しく答えた。

「はぁ!?なんでそこ嘘つくんだよ。」

「だって!唯斗怒っちゃうと思ったんだもん。」

ほっとした。

でも、その嘘は俺に嫌われないための嘘だ。

可愛らしくて、愛おしい。

隣にぴっとりとくっつく希の頭を、撫でくりまわしてやった。

「お仕置きだ、ばか。」

そう言うと、ほっぺを思い切り膨らまして、それから安心したようににへらっと笑った。