「真桜、嬉しいのはわかるけど、顔がにやけてるよ」



美紅に言われて、両手で顔を押さえる。


だってずっと会いたかった先生に会えるんだよ?


顔の筋肉も緩むって。


私と美紅は卓球部がいつも練習している視聴覚室に向かった。


入部したばっかりの頃は、視聴覚室の扉を開けるのに物凄く緊張してたんだよね。


男子ばっかりだったし。


今日も久しぶりだから緊張してるけど。


扉を少し開くと中からコンコンって球を打つ音が聞こえた。


重たい扉を両手で引っ張って中に入る。



「おっせぇーよ」



入ってすぐに聞こえたのは、2・3年の時に部長をやっていた近江幸也(おうみこうや)の声だった。



「ごめんごめん。みんな変わってないねー。懐かしー」



美紅の言葉のあと、みんなが笑った。


こうしてると高校生に戻った気になる。



「それにしても拓ちゃんが副やってたってのが驚きだよな。卓球出来んのかよって思ったし」



部活サボり魔だった木之下泰司(きのしたたいじ)が口を開く。


またみんなが笑う。


“拓ちゃん”って呼んでるのがいつも羨ましかったんだよね…。