恐る恐る顔を上げると、先生の顔から笑顔が消えていた。
「ごめん。小鳥遊のことは今でもかわいい教え子だと思ってる。だから気持ちには応えられない」
冷たい視線に、低い声。
まるで私の知らない人を見てるみたい。
「早く戻ろう」
先生は私に背を向けて、先に行ってしまった。
私はというと、その場にただ呆然と立っているだけ。
待ってよ、先生……。
告白を断られたことはもちろん悲しい。
でもそれ以上に、私の知らない先生を目の当たりにしたことの方が悲しかった。
大丈夫…。
ちゃんと、あれだけはっきり振られたから諦められる。
…泣かないもん。
私も荷物を持って先生を追いかけた。
走るのは大の苦手。
それでも先生を追い越してやりたくて必死で走った。
たぶん高校時代の体育の授業より頑張ってる。
先生の横を追い越す時には、余裕ぶって「お先!」なんて言ってみる。
先生はキョトンとした顔をしてた。
それもそうか。
さっき振ったばっかりのやつがこんなに元気なんだもん。
先生からしたら拍子抜けだよね。


