「仕事はどうだ?」



「今はなんとか慣れてきました。少しずつ楽しいとも思えるようになったし」



私の答えに安心したかのように、先生はホッと息を吐いた。


ひらひらと舞う花びらが、私と先生を隔てる。



「これからまだ辛いこととかいっぱいあるだろうけど、めげずに頑張れよ。我慢できなくなったら話くらい聞いてやる」



先生は大人だ…。


本当は卒業した生徒にまで構ってる余裕なんてないよね。


たとえそれが嘘でも嬉しいよ。


先生にそんなこと言ってもらえると思わなかったから。


これ以上好きにさせちゃダメだよ先生…。



「そろそろ行くか」



荷物を持った先生が笑顔で言う。


気持ちを伝えるつもりなんてこれっぽっちもなかった。


さっきだってそう思ってたはずなのに…。


それなのに気付けば先生の服を両手で掴んでた。



「小鳥遊?」



先生の声に、ドキドキが速くなる。


言っちゃダメ!


頭ではわかってた。


でも遅かったんだ。



「好き……」



言ったあとにハッとして、掴んでいた先生の服から手を離す。