「ここだよ。買い出し付き合ってくれたお礼、って言ってもあんまり時間ないけど。みんなには内緒な?」
先生が連れてきてくれたのは辺り一面ピンク色したところだった。
「ピンクだー!!」
「桜はピンクだろ。ホント小鳥遊は面白いな!学校の近くなのに案外知られてなくてさ。穴場ってやつ?」
桜の木ばっかりで、この狭い空間に先生と私しかいないんだ。
なんか不思議だけど嬉しいな。
「先生!連れてきてくれてありがとう!」
「何言ってんだよ。俺がさっきお礼って言っただろ?お前が“ありがとう”なんて言ったら意味ないじゃん」
優しく笑う先生。
先生が変わってなくてよかった。
「先生髪伸びた?」
茶髪混じりの先生の髪は、ワックスで無造作にセットされてる。
「俺髪伸びんのおせぇから、伸ばせるうちに伸ばしとこうかと思って」
「今からそんな心配してんですか?」
「お前なぁ、笑い事じゃねぇんだぞ。髪って言うのは深刻な問題で…」
冗談で言ってるのか本気なのかわかんない。
けど、先生の話聞いてたら可笑しくてつい笑っちゃう。


