人気のない廊下に、歩く音が響く。
も、もしかして…!
顔をヒョコッと出すと、誰かがこっちに向かってくる。
あれは…男の子だ。
そして、距離が近づくにつれ、顔がハッキリしてくる。
「っ……!」
私は思わず息をのんだ。
だって、黒田君だったから。
う、運がいい!よし、勇気を出すんだ!ひかり、頑張るんだ!
「あ、あの」
ちら、と私を見る黒田君。
「初めまして。私、草野ひかりっていいます。」
一応、“初めまして”って言った。
すると、何故か顔をしかめる黒田君。
「俺たち、本当に“初めまして”?何も覚えてないわけ?」
「え…?」
覚えてないない?って、どういうこと?やっぱり、黒田君は……爽くんってコト?

