彼の名前は宮川航平、高校三年生。


サッカーの試合へ行く途中、交通事故で亡くなった。


3才からサッカーを初め、小学校中学校とサッカーしかやってこなかった彼は突然その夢をたたれてしまい、ずっとさ迷い続けていると言う。


「明日が試合の日なんだ。」


もしかして、明日の試合がこの高校。


あ、いけない。


スマホを取りに来たことを忘れるし。


「あのね。もし良かったら家にこない。」


彼はもの凄く驚いてるけど、今からスーパーに行って夕食を作らないといけない。


「詳しい事は家で聞くから、私の後を着いて来て。」


ごめんね。


走るから、しっかり着いて来てよ。


あれ、もしかしてこれって瞬間移動ですか。


彼が私の手を握ってた。


「僕を怖がらない子は初めて。ここのスーパーで良かった。」


「ありがとう。正解です。」


彼と手をつないでスーパーに入るけど、誰にも彼は見えていないはず。


今日はハンバーグだから豚挽き肉を買って、ジャガイモでポテトサラダを作り、豚汁にしよう。


え、彼には私が思ってる事はお見通しのようで、カゴに豚挽き肉とジャガイモ、大根や人参をどんどん入れてる。


「僕もハンバーグすきだったから。」


そうなんだ。


じゃ、彼の分も。


「僕のはいらないよ。」


ごめん。


「気にしないで。僕は花菜に会えて嬉しいから。」


うん。


「このチョコ好きだったな。」


じゃ、買おう。


「いいの。」


うん。


買いすぎてしまったな。


袋が重い。


え、又瞬間移動。


気がつけばマンションの前にいた。


「偶然だね。このマンションに僕も住んでたんだ。」


3階の302が私が住んでる部屋。


え、もしかして、航平君がこの部屋に住んでいた訳ですか。


三年前母さんが亡くなった日に、彼は事故にあっていた。


こんな偶然があるのか。


母さんが亡くなって、このマンションに二年前引っ越して来た。


父さんの職場にも近いし、私たちの通う学校も近いからこのマンションに決めたんだ。


302は母さんが夢に出て来て、この部屋は日当たりが良いと勧めてくれたから。


「大丈夫だよ。今花菜のお母さんと話したからね。」


玄関のドアを開けると、母さんが笑顔で迎えてくれた。


「航平君いらっしゃい。」


私を無視して二人で会話してるし。