ごめんなさい。


あのサッカーボールには気がついたけど、そんな思いのあるものだなんて気づきもしなかった。


ただ誰かの忘れ物程度にしか思っていなかったのだ。



ボールには航平君のイニシャルが刻まれていた。


花菜が偶然僕を見つけてくれたから、本当に嬉しかったんだよ。


花菜は僕を怖がらなかった。


「私が航平君を怖がらなかったのは、航平君が泣いていたからだよ。」


僕は泣いていたの?


うん、目に涙をためて泣いていた、その姿は母さんが私の前に現れた時と同じだったから。


母さんと同じように、この世に未練を残しているのだろうと思ったから、怖くなんてなかった。


「航平君、ありがとう。私の前に現れてくれて。」


花菜、どうしてありがとうなのかな?


私は母さんが病気で突然死んで悲しくて、毎日泣いてたの。


母さん助けてとか、会いたいとか。


そんな事を思ってばかりいたから、母さんは私の前に現れてたんだと思う。


私が弱いから。


「それは違うよ、花菜。」


花菜は弱くなんかない。


ただね、一人で頑張ろうとするから、花菜のお母さんはそれが心配で花菜の前に現れたんだよ。


花菜、自分を責めないで。


お母さんが又悲しむから。


「ごめんね。お母さん。」


花菜、もう謝らなくていいから、花菜の側にいなくてもずっと花菜をみてるからね。


花菜は幸せでいてほしいし、自分の夢に向かって毎日楽しく暮らしほしいの。


「航平君も花菜の幸せをねがってるって。」


ありがとう、航平君。


航平君に会えて本当に良かった。


悠平君たちの高校が優勝を決めたから、航平君も本当に嬉しそうだ。


「悠平の試合を最後まで見れて良かったよ。もう何も思い残すことはない。」


やだよ。


航平君まだ行かないで。


悠平君が優勝カップを大空に掲げて叫んだ。


「兄さん、ありがとう。」


もう少しだけ待って、もうすぐ悠平君がかけてくるから。


後、一分でいいから、航平君行かないで!