悠平君の家族はすでにいた。


悠平君の姿は見えない。


試合まで時間があるから、父さんに荷物を預けて、健也と菜緒を連れて教室へ行く事にした。


今日は日曜日で教室には誰もいないはず。


誰もいない教室に二人はきっといる。


「おねちゃん、何処いくの?」


「いいからついてきて。」


「教室に航平君と悠平君がいるんだろ。」


大きく頷きながら走る。


思い切り教室のドアを開けると二人が驚いてこちらを見る。


良かった。


二人は会えたんだね。


「おねちゃん、この二人は?」



もしかして、菜緒と健也にも航平君が見えるの?


健也は悠平君しか見えないと言った。


菜緒にどうして見えたのか?


もしかして、振り向くと母さんがいた。


ごめんね、健也。


「菜緒にだけ見えるようにお願いしたの。」


「お母さん?」


菜緒がお母さんに抱きついた。


健也が俺は大丈夫だと笑う。


私が母さんの代わりに健也を抱きしると離せと暴れる。


「母さんにも航平君にも、もう時間がないの。」


うん。


分かってる。


「お母さん、消えちゃうの。」


「ごめんね、菜緒。」


航平君がサッカーボールを悠平君に渡した。


「試合最後まで見れないかもしれないけど、ずっと悠平を応援してる。父さんと母さん頼むな。」


悠平君の両親に航平君の姿を見せる事は叶わなかったが、ご両親に航平君の存在を確認して貰えたらしい。


航平君はそれだけで充分だと言う。


もっと早く航平君を見つけていたらと思うと悔しくてたまらない。


航平君ごめんね。