それからはお互いに何も喋らず、無言のまま家の前に着いた。 「着いたぞ悠。今日ははやく寝なさい」 「なあ、父さん…」 「なんだ?」 俺はある事を決心した。それは 「俺、あの街に帰りたい」 最期の願いだった。 父さんはしばらく黙り込むと、俺の手に名刺を渡してきた。 「その事は、また後日話そう」 そう言われ、俺は車を降りた。 幸せだったあの時。 いい思い出で溢れているあの街で 俺はこれから生きて行こう。 そう決めた。