結局、朝になっても母親は帰って来なかった。
今までにも何回かこんな事はあった。
男の家かホテルに泊まり、あたしとあたしが学校に行ってる間に帰ってくる。
枕元の時計を見ると6時を少し過ぎた頃だ。
あたしはいつも通り、シャワーを浴びて準備を済ませてから朝食を作った。
昨日、母親が褒めたあたしが作った卵焼き。
どれだけ味わっても普通だ。
母親の味なんて覚えてもいないあたしにとって、何が美味しいとかそんな事は分からない。
でも、1つだけ言えるのは昨日悠が作ってくれたオムライス。
あの味だけは、一生忘れないだろう。
あたしはさっさと朝食を済ませると母親の分にラップをかけ、冷蔵庫に入れる。
カバンを持ち、靴を履こうとした時だった。
バンッ!
玄関のドアが外側から乱暴に開けられた。
