教室の中に入るとあの男にしつこく話しかける隣の席のブリッ子が目に入った。



「ねえ原田くんって〜普段なにしてるのぉ?寧々はねぇ〜最近ネイルにハマってるんだあ!」




そんなブリッ子の話を全く聞いていないのか、黙々と携帯をいじっている。



そしてブリッ子が「ねえ聞いてる原田くん?」と聞くと「あぁ」と同じ返事を返すだけ。




あの様子だと、よっぽど興味がないのと
かなり嫌がっている様子だ。




それでも話し続けるブリッ子はある意味すごいと思う。




あたしは席に着き授業の準備をしようとした時だった。



「ねえちょっと紺野さん!原田くんったら全然話してくれないの!寧々かわいそうだと思わないっ?」



と急にブリッ子があたしに近づき、話し掛けてきた。




あたしの名前知ってるんだこの人。



まあ、あたしはあんたの名前なんて知らないけど。


その瞬間、モワッと甘ったるい香水の匂いが鼻につく。



うわっ…くさっ!!




そう思ったあたしは思わず顔をしかめる。




「ちょっと…紺野さんまでなによ!そんな顔して!皆んなして酷いよぉ!」




今にも泣き出しそうな顔でそう言うブリッ子。






あぁ…ウザイ。





そう思ったけど泣かれたら更に面倒臭い。

ここは優しくするべききだな…




「あのねっ、ちがうの。確かに原田くんも返事しないのも悪いけど、そんなに一方的に話されてもどう話していいか分かんなくて誰でも戸惑うと思うよ?」




あたしがそう言うと、ブリッ子はキョロっと表情を変えた。



「そっかあ。そうだよねぇ!ごめんね結衣がバカだったぁ。紺野さんも怒っちゃってごめんねぇ?」




ああもう。いいから離れてよ臭いなあ。




「ううん。あたしは大丈夫だから」




そう言うとブリッ子は自分の席に着いた。





…はあ。今日はいつも以上に疲れるな。