ガラッと扉を開ける音と共に先生が入ってきた

「橘ぁ、お前は、人ひとり呼んでくるのに何十分かけるんだよ。で、あいつは?」

そう言って、先輩を探す先生を横目に、私はグラウンドを見た。

「先輩には笑っていて欲しいんです
....例え、その笑顔の先が、私じゃなくても」


「なんか言ったか?」

険しい表情をした先生の顔が、なんだか可笑しくて、私は笑った。


「...先生、先輩はもうここには、いませんよ」


そう言えば、先生はまた何か言ってきて、失恋の余韻にすら浸らせてくれないこの状況に、私は"どうしたものか"と、ため息をひとつ吐いた。




*end*