「誠先輩」 そう美術室の窓から、じっとグラウンドの方へと視線を向ける先輩を呼んだ。 それでも、私の声が届いていない先輩に歩み寄った私は、先輩の耳元まで唇を寄せた。 「...誠」 そういつまでも気づかない先輩への、ほんの少しのイタズラ心で"先輩"と付けずに言った。 「.....え」 こちらを見た先輩は、初めて見るほど驚いた表情をしていて私は戸惑った。