翌朝、私は制服に着替える。
 待て。
 動かしていた手を止める。
 今の私は男。女物の服で学校へ通うのは流石に恥ずかしい。
 私は携帯で友人にメールをした。体調不良だから今日は休む、と。
 私服に着替え直し、家を出た。
「あ……」
 向かいの家から昨日の女子高生が出てくる。
 女子高生は私に気付かぬまま行ってしまう。
 私は後を追った。
「君、待って!」
 立ち止まり、振り返る女子高生。
「昨日はありがとう」
「え?」
「不良に絡まれてるところ助けてくれたでしょ?」
「ああ! あの時の。……昨日と雰囲気違わない?」
「そ、そんなことないよ」
「いや、昨日見た時はその胸、膨らんでたよね?」
「……………………」
 何も言えない。
「ま、いいけどね。私、黒崎 玲奈─くろさき れな─。よろしく」
「よ、よろしく。……あ、わた、僕は山下。山下 洋一─やました よういち─」
「男だったんだ。セーラー服着てたから、てっきり女の子だと思ってた。あなたの学校は男もセーラー服なの?」
「ああ、あれは、その……趣味! そう! ただの趣味なんだ!」
「ほう。女装するのが趣味だと。変態なの?」
「え?」
「男子が女の格好するのは変態のやることでしょ?」
「う……」
 何も言い返せなかった。
「で、お礼だけ?」
「いや、あの、僕と付き合いませんか?」
「初対面でいきなり? 普通は仲良くなってからの告白でしょ?」
「ダメ……かな?」
「面白いからいいよ。私もちょうど彼氏募集してたところだし」
 やったー!
 私と黒崎さんは交際を始めることになった。