「ふうん」
「好き好き大好き」
「はいはい」
「あたしも、夜一の恥ずかしい顔見たいな」
素っ気なくて悔しいから、そんなこと言ってみる。
「いいよ。
今度見せてあげる」
「へっ?」
「好きなことしていいんでしょ?
たぶん恥ずかしくなるよ。
俺も」
「何するつもりだよ!
んなことより、絵描けよ。
本当は好きなんだろ?」
「まあ、そのうち」
「女の子の絵描いてるって弟が言ってたぞ?
もしかして、あたしの絵だろ?」
「女の子の部類に入らないでしょ」
「夜一くーん……」
「まあ、いるりちゃんが笑うなら描いてもいいよ」
「……んっ……うん」
夜一は誰かを笑わせたい人だ。
じゃあ、あたしはそれを見て笑う人になりたい。
君の目から見える景色。切り取った風景。あたしはいっぱい見てみたい。
その筆先に描かれていく未来に、あたしがいてほしい。
「じゃあ、来週は脱げばいいよ。
モデル」
「夜一のくせに」
繋ぎ方を変えた手。指と指が絡んだ。
あたしはこれからきっと、夜一と色んな景色を見ていく。
それは同じ色じゃないだろうけど。
それでも隣にいたい。
できれば、このくらいのスピードで。
ゆっくり。
ゆっくり。
歩いていけたらいい。
「キス、する?」
be happy and smile



