「……うん」
「ね?
じゃないとこんなことしないでしょ?」
「あたし、だね」
頷きながら、あたしはまた小さな夜一を思い出してた。
小学生の夜一が、「いるりちゃんの名前ってさ面白いんだね」と得意気にあたしの名前を呼んでた日のことを。
「ローマ字で書くとIRURIって、上から読んでも下から読んでも同じになるんだよ」って。
嬉しそうに。
そうだ。
あの顔は。
絵を書いてるときみたいに嬉しそうな顔だった。
「俺、ずっと好きだった」
「……うん」
「いるりちゃんが、大好きだった」
「うん」
「だから、嬉しい」
「嬉しいのか?」
「そうやって、俺のこと意識して見ててくれてたって思うと。
俺のことを自分のことみたいに言ってくれるのも……うん」



