「あっ。言ってたかも」
子供な夢だな。そんなの今じゃ思わない。
「今でもそれが夢?」
「まさか!身の程知ってるっつうの!」
「じゃあさ、俺もそれと一緒なんだよ。
俺らあれから同じ歳をとってきたんだ。
濱田さんの夢が変わるなら、俺の夢も変わってても可笑しくないだろ?
そういうことだよ。
別に描きたくない。
押しつけんなよ」
「そうだけどよ。
でも夜一、絵うまかったじゃん。
才能あったじゃん。
表彰とかされてたじゃん。
あたし覚えてるよ。
作文でさ、夜一が画家になりたい…って言ってたの。
あたしは…あのときの夜一の嬉しそうな顔が忘れられなかったんだよ。
なぁ、絵、好きだっただろ?」
ふっと目を伏せる夜一が消えそうな声で言った。
「濱田さんは昔からクラスの人気者。
可愛くてモテてた」
「はっ? 何言ってんだ?」
「気付いてないでしょ?
近所にいた男友達、一度は濱田さんのこと好きになってるよ」
「はっ?
んなわけねーだろ?
男扱いされてたっつうの!」
「自覚ないだけだろ」
「ぜってーないっつうの!」



