結局あたしと奈々子は、ヒィヒィ言いながら小さくて大きな壁を登った。


インストラクターも苦笑いな程、絶叫しながら……


ほんと、迷惑な生徒だったよね……
ごめんなさい、こんなんで参加して。


あたし達以外は、いかにもスポーツ大好きですって感じの女の子が四名。

登っては降り、登っては降りてを繰り返していた。



「……あの子達…ほんとに女子?」



体力の限界を悟ったあたし達は木陰で腰をおろし、他の生徒をただぼんやり眺めていた。


奈々子は、首に巻いていたタオルで口元を覆いながらジトーっと目を細めた。



ミーンミンミーン……



頭の上から蝉の鳴き声を浴びて、あたしはまた耳鳴りを覚えていた。


蝉の声って……
まるで鼓膜に蓋をされたみたいに他の音が聞こえなくなる。


頭の奥を劈(つんざ)くような音に、目眩さえ起こしそうだ。


ここからは、男子の様子も見て取れた。

今まさに、翔平が高い岩の壁を登っている所だった。
翔平は器用に手足を使って、複雑な岩を登っていく。



「翔平って……ほんとあーゆうの得意だよね」


細いけど、程良く筋肉の付いた腕が、太陽の光と汗でキラキラと光って見える。
真っ黒で少し癖のある髪が、翔平の動きに合わせて揺れていた。

そんな翔平を見て“男”だなぁと思いながら、奈々子に同意を求めた。



「んー……たしか、もうバイクにも乗ってるんだよね?」

「えっ!? そうなのッ!!?」



奈々子の言葉に驚いて、あたしは思わず顔を上げた。
そんなあたしを見て、奈々子はあんまり興味なさそうに「知らなかった?」と言いながらまた翔平を眺めた。