「うわーッ!お前ら1泊の合宿にどんだけ荷物持ってきてんだよっ!!?」



「信じられない」と言うように目を見開く大樹の手に目をやるとあたしと奈々子の荷物の3分の1程度しかなかった。


奈々子は、うちわで風を作るのをやめてそれで大樹の鞄をツンと突きながら言った。


「そう言う大樹はなーんでそんなに少ないのよ? あ! わかった…着替えないんだ。 サイテー!」

「あほ。 んなわけあるか」


「くさー!くさー!」って大樹に言いながら顔をしかめた奈々子を大樹は呆れ顔で眺めると、あたしにその視線を移した。



大樹はなぜかあたしの顔と手元を見た。



そして、空いている手をあたしの目の前に差し出した。



は?


「……」


大樹にあげるモノなんてないんだけど……?

意味がわからず、キョトンとしてしまう。



「持ってやるよ」



じれったそうに言うと、大樹はあたしの鞄に手をかけた。


え…?



「ええぇぇ!? い、いいよっ! これくらい大丈夫だよっ! あたしのより奈々子の荷物の方が重たいから、奈々子のを……」


大袈裟に顔と手を振ってみる。

奈々子に視線を向けると、なぜか奈々子はギョッとしたように目を見開いた。

でも、大樹はあたしが言うのを最後まで聞かずに遮った。


「ユイはちびなんだから…ハンディだろ?」

「なっ…ち、ちびって…!!」

「あはは。 そうだよ、ユイはちびっ子なんだから遠慮しないのぉー」


奈々子も加勢して、二人に半ば強引に肩から引っこ抜かれ、あたしはよろよろとバランスを崩してしまった。


―――ドン!


「…きゃっ!?」




その拍子に、背中が何かにぶつかった。