「おーい、集まったかぁ? 実行委員!人数は?」

「揃ってまぁーす」



担任、米山の呼びかけにどこからか声が上がる。

校門の前には大きな鞄を持った生徒達が集まっていて
二台の大型バスが、客が乗り込むのを今か今かと待っていた。

緑が生茂った桜並木には、たくさんの蝉達がその存在を主張するようにけたたましく鳴いている。

その大音量に、思わず耳を塞ぎたくなる程だ。



「よぉし、いるな! それじゃあ前の奴からバスに乗れー」



ギラギラの太陽の陽射しを浴びて、すでに汗だくの米山は首にかけていたちょっと黄ばんだタオルで、グイッと顔を拭った。

髭は薄っすらと青くなっていて、あたしの耳にまでジョリって音が聞こえてきそうだった。



「つーか、米山張り切りすぎ。暑苦しさまで2倍だっつのぉ」



隣りでダルそうに立っていた奈々子は、持っていたうちわを仰ぎながらパタパタと微力な風を作っている。


アスファルトの照り返しからくる熱と、奈々子のうちわから来る熱風で、あたしの肩にぶら下ってる鞄がさっきより重たく感じた。



ヒロがあたしの前に現れなくなってから2週間が過ぎていた。

はたして成仏できたのか。

どこへ行ってしまったかあたしにはわからない。


ただ、胸にぽっかり空いてしまったような
そんな寂しさを感じていた。



はあ……





「おーっす、ユイ」



その時、陽気……うんん、のん気な声が頭上から降ってきた。


ジトッと振り返ると、キャップを頭の上に乗せた大樹が立っていた。



「…ってあんだよ、お前らシケた面しやがって。暑苦しいっつの!」



頭1つ分高い大樹をなぜか白い目で見ちゃう。


……暑いのはアンタだってば。



なんてゆーか、ムシムシ暑い時って、ちょっとした事が怒れちゃったりするよね?


真っ黒なロゴ入りTシャツにカラフルな膝丈のハーフパンツをはいた大樹。
黙ってれば、そこそこカッコいいのに……