『……――ユイ?』

「…………わあッ!?」



いきなり、ヒロの顔が視界を塞いだから
あたしは反射的に体を仰け反らせた。



び……

びっくりした……


突然の事で、あたしの心臓はドクドクと体中に血を送り出す。


そんなあたしの反応に、ヒロは眉間にシワを寄せて瞬きを繰り返した。


『……なんだよ』

「だッ……だって! いきなり顔近づけるんだもんッ……び、びっくりするに決まってるでしょーが!」



あわわわ!

……でで、でしょうーがって、あたし何動揺しちゃってんのよッ



ヒロは、そんなあたしを暫く眺めていたけど何を思ったか面白そうに口角をキュと吊り上げた。

そして、満足そうに頬を緩めたまま、乗り出していた体を引っ込めたんだ。



……なな…なにそれ。


ダメだ。

あたし、わけわかんない。


顔……熱いし!



「……ッ……」

「……ユイ?」

「ヒロが、いけないんだからね?」



勝手に溢れる涙を、拭いながらあたしはヒロをジトッと睨んだ。



「……うん。 ごめん。
ハハ……ユイに泣かれると、けっこーキツイなあ」


「……うぅ……」



それから、暫く黙っていたヒロは「あ」と小さく声を上げた。




『……一つだけあった。 この世の未練』

「……未練?」



首を捻ったあたしの顔をまっすぐ見つめるヒロ。


――ドキン!


な……なに? さっきから!!!




なんだかあたしの心臓は、大忙しだ。