「あ。 もしかしてバスケで知り合ったのかな?」
「へッ!!? ……あぁ、そ、そうなんです! あたしヒロ先輩に憧れてて……それで……」
我ながら苦しい言い訳……。
手の平に嫌な汗をかきながら、あたしは何度も瞬きを繰り返す。
ヒロ先輩って……変なの。
なんだか、自分で言った言葉に歯痒くなって、あたしは瞼をキュッと閉じた。
『ユイは俺に憧れてたのかあ。 知らなかったな』
「そッそれは……」
ヒロの声に答えてしまった事に気づき、慌てて口をつぐむ。
思わず顔を上げると、今まで黙っていたヒロが面白そうにあたしを眺めながら「へーえ」と笑った。
し…しまった!
てゆーか……
ヒロのバカバカ!!!
なんで突然話しかけんのよぉ!
思わず答えちゃったじゃん!
「ヒロに憧れて…………そっか…そうなの。 ありがとうね」
「……」
半分涙目のあたしの耳に、小刻みに震えたか細い声が届いた。
そして、ヒロのお母さんの瞳が微かに揺れた気がした。
『…………』
そんなお母さんをヒロは黙って見つめていた。
大きく開け放たれた窓からは
真っ白な入道雲が見える。
蝉の声
風鈴の音
お母さんの揺れる瞳
胸がギュッとなった
夏の日の午後だった―――……