今すぐぎゅっと、だきしめて。



右側に台所や居間があって、その奥にはヒロの部屋があった。


ヒロのお母さんは、部屋に入ると振り返りながら少し苦しそうに笑った。



「……あの日のままにしてあるの。 いつあの子が…戻って来てもいいように」

「……そうなんですか」



「戻ってきても」って…ヒロのお母さんは、ヒロが亡くなった事をまだ受け入れられてないんだろうか。



……当たり前だよね…。

何よりも大事な子供が、自分より先に逝ってしまったら……



あたしには、想像も出来ない。





それだけ、お母さんは苦しんでいるんだ。





ゼミダブルのベッドに
きちんと片付いた勉強机。


たくさん積まれた洋楽のCD。
コルクボードにはバスケの写真……
それから、友達との写真。



その中でたくさんの友達に囲まれた笑顔のヒロ。





あたしの知らないヒロが、そこに居た……。