耳まで沸騰したあたしから不意に視線を落とすと、ヒロは首をポリポリと掻いた。

宙を仰ぎながらうーんと何かを考え、そして「やっぱりダメ…か」なんて独り言のようにポツリと言葉を零した。



それから暫くジッと考えるように俯いていたヒロは、意を決したように顔を上げた。



――パチン



あたしとヒロの視線がしっかりと絡み合う。



それはあまりに強くて真っ直ぐな瞳。

その瞳の力に思わず怯んでしまった。




「ユイ、俺に力かして?」

「……え?」




文句を言ってやろうかと思っていたのに。


見つめられた瞳に吸い込まれないように唇を噛締めるのがやっとだった。


そして、やっと解放されたと思ったら。
また意味不明な言葉。



力ってなに?



何もないわよ、こんな平凡なあたしに。



あたしはただの15歳の女の子。



ただ、みんなと違うのは、この中学最後の貴重な夏休みに。

あんたみたいなユーレイがいるって事!



それ以外は、なんにもないんだってば。



きょとんとして首を傾げたあたしを興味深そうに眺めると、ヒロはまた「うーん」と宙を仰いだ。


それ、癖なの?



……なに、さっきから。


そして宙を仰いだまま、視線だけをこちらに落とした。



「もしかして……気づいてない、とか?」

「…どう言う事?」

「俺が言っちゃっていいかわかんないけど。 ユイ、物凄い霊感持ってる」

「え?」




ええぇぇえええッ!!?