真っ暗になったあたしの視界。
それは、目を瞑ってるからで。
目を瞑ってるのは、すぐ傍にある気配のせい。
「………」
でも、いくら構えてみても何も起きない。
え?
…え?
どういうこと?
キスされることを覚悟したあたし。
恐る恐る目を開ける。
もしかしたら、思いとどまったのかも。
だって、おかしいもん。
あたしとのキスで、ヒロの生前の記憶が甦るなんて……
そんな事を考えながら、そーっと開けた瞼の隙間から見えたのは。
長い睫毛
そしてその睫毛に隠れている茶色い色素の薄い瞳。
その中に、目を見開いたマヌケなあたしの顔が
しっかりと映りこんでいた。
カアァァアア!
一気に体温と共に顔が火照りだす。
ヒロは、ただジッとあたしの顔色を伺っているようにも見えた。
すぐそばにいるのにその距離を保ったまま、何もしようとしない。
「…ヒ、ヒロ?」
「シィ。 黙って」
「へ?」
ヒロは、ゆっくりと手を上げる。
そしてあたしの口元へ持っていくと人差し指をそっと当てた。
その瞬間――…



