今すぐぎゅっと、だきしめて。


怖いんですけど……。

ヒロがヒロじゃないみたいだよ。



「どうしたの?」



心臓はすごい速さで鼓動を始めた。



ドクン
ドクン
ドクン



やだ……
この感じ……

初めてヒロに会ったあの夜に似てる。


膝がガクガクと震えだす。


もう立ってるのがやっとで、あたしは持っていた財布を落としそうになってしまった。



どうしよう……


なにか、来る。


なんだろう……何かがこっちに向かってくる。



―――コワイ。




『大丈夫』



その時、すぐ傍でヒロの声が聞こえた。


顔を上げると、あたしのすぐ隣にいて。
あたしに寄り添うように立つヒロは、暗闇を真っ直ぐ見つめている。



『絶対に、俺から離れないで』

「……ど、どうゆう事? なに?何がいるの?」



ヒロの視線の先。


何かがいる。






でも、それはあたしには見ることが出来なくて。




ただ、ヒロにしがみ付きたくて仕方なかった。