「は、離して……」
泣き顔が見られたくなくて。
身をよじる。
だけど、もっともっとヒロの腕の力は強まって。
痛いくらいだ。
耳にヒロの熱い息がかかる。
そこからジワリと溶けちゃいそうだ。
「わかんない?」
そう言ったヒロは、あたしの顎をつかむと
そっと振り向かせた。
目にかかりそうな前髪の間から、視線が絡まる。
ヒロの瞳の中に、崩れたあたしの顔。
ああ、まつ毛長いな……。
キラキラしてる。
下から巻き上げるような風が、あたしとヒロを包む。
その風と一緒に、桜の花びらが頬を掠めた。
映画のワンシーンみたい。
息をのむほど、綺麗だよ。
ドキン
ドキン
「……俺が、キスしたいのはユイだけだよ」



