耐えられなくて、キュッときつく瞼を閉じる。
自分で、自分の限界を感じた時。


「ユイ?」



喉の奥から搾り出すような、そんな声が風に乗って届いた。

そっと目を開けると。
ヒロは上目使いであたしを覗き込んで

そして、遠慮がちに言った。




「……俺のエゴで、ユイを連れ出したことは悪かったと思ってる」


「……」




髪に触れていた右手の指先が、頬に触れ。
耳たぶに触れた。


あたたかくて、くすぐったいその感覚に
ピクリと震えたあたしは思わず目を細める。




「でも……どうしても」




開いていた左手がそっと伸びてきて、その親指が唇をなぞる。



トクン

トクン





「すぐにユイに触れたくて……」


「……ぁ、ヒ……ヒロ……」




近づく距離。


耳たぶから、あたしの頭を抱えるように動いたその手が、引き寄せる。





夢見てるみたい……。




トロンとしていく視界。

これは、あたしの想いが涙となって溢れそうだから。


ピンクの桜がのんびりと風に舞う。

そして、少しだけ傾いたヒロの顔。



前髪が頬にかかってくすぐったい。
鼻の頭がこすれて

唇から体温を感じた


その時だった……。