今すぐぎゅっと、だきしめて。





やっと触れた手は、ユーレイの時のように痛くもなんともなくて。



あったかくて。
いとしくて。
懐かしくて。
切なくて。



涙が出た。


そんなあたしを見て、スッと目を細めたヒロは嬉しそうに口元をクイッと持ち上げた。




あたしの手をグイッと自分のほうへ引き寄せると
耳元にその唇を寄せた。



そして。





「今すぐ、2人きりになりたい」





内緒話で。
首筋を掠める甘い吐息。

ゾクゾクってして、目の前がクラクラした。




「きゃああ」ってなる構内。


身を寄せ合ったあたし達。

そりゃ、みんなからしたらキスしてるように見えたもかも。




「待ちなさい」って言う先生達の声。


だけど。

溢れた気持ちはもう、止められない。






階段を駆け上がって、引き止める声もそのままに

あたしとヒロは外へ飛び出した。



桜色の世界へ……。