桜咲く。
4月―――……
「ええええッ!?」
開いた口が塞がらない。
うそ……
だって、そんなの全然気が付かなくて……。
ちぃちゃんもなにも言ってくれなくて。
大樹だって……
奈々子だって……。
頭の中が真っ白。
頭上に咲き乱れる満開の桜。
あたしのパニックをよそに、花びらは目の前をヒラヒラ舞う。
その先に。
真っ黒な髪をサラサラと風に遊ばせて。
自転車にまたがった、永瀬真尋がいた。
「そんなにビックリする事ないじゃん。
ユイは嬉しくないの?」
「ええッ? そ、そりゃあ嬉しいけど、さ」
少しだけすねた表情をするヒロに、そう続けた言葉も最後はゴニョゴニョと小さくなってしまった。