真っ黒な前髪の隙間から


色素の薄い茶色がかった瞳が
まっすぐにあたしをとらえて離さない。



――…息をのむ。




長いまつ毛。
瞬きのたびに、揺れる。


伏し目がちのヒロは、小さく息を吸い込むと
風にのってかすれた声が、届いた。









「ずっと……


ずっと、ユイが好きだった……」









その瞬間、ホームの中を電車が通りすぎる。



ガタン
 ゴトン

ガタン
 ゴトン




うるさいぐらいの騒音。
だけど、まるで世界はあたし達だけみたいだ。


 
ほんと?

ほんとにぃ?



震える手で、あたしは遠慮がちにその背中に腕を回した。




「……うぅ……ッ……

お、遅いよぉおお」



「ごめん」





あったかくて
甘くて
服の音が軋んで


白い吐息が漏れて




ユーレイの時よりも
もっともっと甘いヒロは




「本当はユイを、抱きしめたくて
しょーがなかったよ」



そう言って、腕の力をギュッとこめた。




「イタ……
そんなにしたら、痛い」



顔をしかめたあたしを見て、ヒロは「ハハッ」って笑った。