「やっぱ女の子は、浴衣着ると雰囲気変わるんだね」
「……ッ」
あたしの後ろには誰も居なかったはず。
でも確かに耳元で声が……
「……俺だよ、ユイ。 いい加減慣れてほしいんだけど」
ビクビクしていると、呆れたような少し怒ったような声がしてあたしは慌てて振り返った。
その先にはヒロの姿。
白いシャツにグレーのジーンズに身を包んでいる。
なーんだ、ヒロか……。
さっきまで誰も居なかった場所から突然声が聞こえて、ほんとにびっくりするんだけど。
なぜかヒロの姿を見てホッとする自分がいた。
「……慣れたよ。 これでも」
そう言った瞬間。
何かにつまずいて、あたしの体はバランスを崩した。
「キャッ…」
グラリと歪む世界。
うぅ……
やっぱ着慣れない浴衣なんてやめとけばよかったんだ。
ギュッと瞼を閉じて、衝撃に備える。
恥ずかしいよーッ!!
「…………」
…あれ?
今頃あたしは、みんなの笑い者になってるはずだった。
でも、いつまでたってもあたしの体は斜めのまま。
腰のあたりにぬくもりを感じて、あたしは誰かに支えられてた事に気づいた。
「大丈夫か?」
……ヒロ?