小さな言葉だけど。
たしかにあたしの耳には届いた。
「俺……奈々子に告られた」
言いにくそうに、首元に手を置いた大樹はふとその視線を落としてしまった。
「ん。 知ってる」
「…………。
つか、お前らどこまで仲良いんだよ」
「えへへ」
そうだよね。
大樹の気持ち知りながら、奈々子だって隠さずにあたしに打ち明けてくれた。
あたしと奈々子は、どんなことがあったって。
隠し事、なしだもん。
呆れながら大樹がそんな事言うもんだから、なんだか誇らしくなってしまった。
「大樹。 奈々子のこと……」
手のひらに収まっていた桜色の消しゴムを、ノートの上に転がしながら大樹の顔をチラリと見上げた。
あたしの言葉に、大樹が眉間にグッとシワをよせて短い髪をクシャリとすいた。
「……うーーん。
……………好き、らしい」
「だよねッ!」
大樹が奈々子を好きなならないわけがない。
「気づくの遅いよぉー」
今度はあたしが大樹を小突く番だ。
大樹は耳を真っ赤に染めて、すっごく迷惑そうな顔をして見せた。
でも。
そんなの関係ないもんね!
よかった。
――――…本当に。



