今すぐぎゅっと、だきしめて。


切れ長の瞳の奥が、にわかに揺れている。

でも、どうやら揺れてるのは、あたしの方で。
大樹の真っ直ぐな視線は、あたしの心を見透かしてしまうみたいだった。




「大樹は家族みたいにずっとそばにいてくれたし……。
かけがえのない存在です。
でも、ごめん。
あたし、大樹のこと好きだけど……
それって恋愛とかじゃなくって……なんてゆーか……」



そこまでしどろもどろになりながら言うと、最後のほうは震えてしまっていた。


ちゃんと言わなくちゃいけないのに。

じゃなきゃ、大樹に失礼なのに。



唇を噛み締めたあたしを見て、大樹が小さく息を吸い込むのがわかった。





「……ユイ」


「…………」




気が付いたら涙が零れてて。



「ッ……ごめん」



とめどなく流れる涙を、何度も何度もあたしはセーターの袖で拭った。



「うん。 わかってる。
俺、ちゃんとわかってるから」


「……ッうぅ……大樹ッ……」



少しはにかんだ大樹は、まるで子供をあやすみたいに目を細めて微笑んだ。
困ったように、でも嬉しそうに眉を下げて笑う大樹を見て、もっと涙が零れた。



「……んだよ。
なーに泣いてんだよぉ。
ほら、笑えって! ブサイクだなー、ユイは!」



大樹は身を乗り出すと、あたしのおでこをツンと小突いて悪戯らに笑った。



「なッ! し、失礼だなぁ……」



ムッとしたあたしを見てトサッとイスに身を投げ出すと、大樹は口元を緩めてそして言ってくれた。




「……俺さ……」