今すぐぎゅっと、だきしめて。


大樹は慌ててそれを拾うと、奈々子の姿を探して。
それから居ないことに気づいてあたしを見た。



「……奈々子の消しゴム……借りっぱなしだった」



そう言って、ピンク色のそれを大樹に見せた。


大樹は驚いたように、目を見開くと小さな溜息をついて雑誌を机の上に置いた。




「で? どこまでやったの?」


「……」




大樹は身を乗り出すと、あたしのノートを覗き込む。
その瞬間、甘いムスクの香りが鼻をかすめた。



いつの間にそんなものつけるようになったの?
って、聞かなくてもわかる。

クリスマス以来だ。


きっと、プレゼント。




「ねえ、大樹」


「んー?」




あたしは奈々子の消しゴムをキュッと手の中にしまいこんだ。

机の上に突っ伏して、教科書を手にした大樹は興味なさそうにそれをペラペラとめくっている。



――…大樹。


思い出す子供の頃の記憶には、必ず大樹がいた。

ずっとあたしのそばにいてくれた大樹……。
それは、今も……そしてこれからも変わらないでしょ?






「前に言ってくれたよね? 大樹……。 あたしが好きだって……」


「……」




俯いたあたし。
今までうやむやにして、返事をしてこなかったこと。


ごめんね。






体を起こした大樹は、まっすぐにあたしを見つめていた。