今すぐぎゅっと、だきしめて。


カラオケ店で、解散したあたしたちはそれぞれ帰路についていた。

真冬は、本当に日が暮れるのが早い。


4時を回った今も、空はすっかり夕焼けで。
まだほんのり明るい空には、太陽の代わりにまん丸の満月が出番を待ち構えているようだった。



あたしは、マフラーで口元まで覆いながら寒空の下を足早に急いだ。


毎年、そうだけど。
今年も、お母さん特製のちらし寿司とケーキが待ってる。

え?

普通はクリスマスならチキンだって?
うちは昔から、クリスマスはお寿司って決まってるの。


それを疑わないし、チキンをあえて食べようとも思わない。



そんな事を考えながら、さらに歩く速度を速めた。



うちにつくころには、もうすっかりまっくらになっていた。
門に手をかけたその時だった。

人の気配に気づいて顔をあげる。


その先には。



「こんばんは。 ユイちゃん」



甘い香水の香り。
寒空の下だからかな、それとも今日が特別な日だから?



「あ、ちぃちゃん……こんばんは」 



甘いだけじゃない。
なんだか、大人の女の人の色気すら感じてしまった。


今から出かけることみたいで、キレイに着飾ったちぃちゃんがそこにいた。


サラサラロングが、今日は揺るくまかれている。



デートかな……。


やっぱりクリスマスには、恋人同士一緒にいたいって思うよね。
そして、プレゼントを交換し合って。

甘い言葉を囁いて。
もっともっと甘い蜜みたいな一夜を過ごすんだ。


ちぃちゃんも?



そう思ってしまって、急にちぃちゃんの顔を見ていられなくなった。


きゃああ!
あたしってばなに考えてんの!



でも……。