今すぐぎゅっと、だきしめて。


……。

ちょ、ちょっと待ってください?




「えーと……あれ?」




キョトンとしたあたしに、少しイラッとしてもう1度水谷は掴んだ手で力をこめた。




「だからっ、安達が好きって言ってんの!」


「えええええッ!?」




なな、なんでぇ?



あの、水谷が?


お調子者で、いつもクラスの真ん中にいて。
他の男子とふざけてて、バカなのに

勉強もスポーツも出来て。
顔もそこそこ良くて……。
女の子に、密かに人気のある水谷。


そそ、

その水谷が、あたしを好きっ!?




「“え”じゃねえよ。 わかった? だから、これから2人で抜けねえ?」


「え…………や、た、タイム! 意味わかんないんですけどっ!」




ズサーっと両手を前に突き出したあたしの手を、パシンって払いのけた水谷は、眉を片方クイッと持ち上げた。




「……なんでわかんないの。 簡単じゃん」


「簡単じゃないっ。 だって、だって、理由がわかんないんだもん。 み、水谷絶対あたしのこと嫌いって思ってたし。  あたし、嬉しいけど……応えられない。 ご、ご……ごめ……」



うわー、あたし何言ってんの?
予想外の展開に、もう頭の中真っ白。

顔が熱いよーっ。




「――あのさ」