「負い目を、感じてたのよ。

真尋は事故で意識がなくて、たくさんの管(くだ)に繋がれてる……。 それなのに、わたしはずっとそばでささえてくれていた裕貴に、惹かれていった。 真尋が目を覚まして、その気持ちにフタをしてたの」



そこまで一気に言うと、ちぃちゃんはキュッとあたしの手を握りしめた。




「でもね? 真尋……気づいてた」


「え?」


「わたしの裕貴への気持ちに、気づいてたの。 目を覚ました時から……」





胸がつぶれそうだった。





どうしてだろう。

どうして……人の気持ちってうまくいかないんだろう。


両想いならそれでうまくいくってわけでもないんだ




人の心は……

変わるの?








真っ黒な、ちぃちゃんの長い髪が、あたしの頬をかすめる。



甘い香り。

だけど、それは香水の香り。
あたしも知ってる、ベビードールって名前の香水だ。


カスミソウなんかじゃない。



思えば、ちぃちゃんの匂いはいつもこの香水の香りだった。

どうして今まで、これをカスミソウなんて思っていたんだろう。









「ユイちゃん。わたしね?

 
真尋と別れたの」