街路樹が、冬に向けての支度を始めてる。
葉を落とし、また訪れる春のために。



コツコツと履き崩したローファーを鳴らしながら、あたしはスクールバックを肩にかけなおした。



「ユーイっ。 おはよ」



軽やかな声と共に、奈々子があたしに追いついた。



「おはよー。 寒くなってきたね」

「ほんとだよ~」




口々にそう言いながら、あたしたちは朝早いのに、たくさんの生徒が行きかう校門をくぐった。


靴を履きかえようと下駄箱を開けた瞬間、何かが足元に落ちた。




「……ユイ、なんか落ちたよ? って……これって……」


「……」




あたしより先に気付いた奈々子が、それをパッと拾い上げた。
それが何かを確認して、奈々子は大きく吊り上った瞳を見開いてあたしを見た。



それは、手紙。



「え、あ、あたし?」



思わず落っことしそうになって、慌てて両手で手紙を受け取る。


見ると、宛先に『安達ユイ様』と綺麗な字が書かれていた。

信じられなくて、裏返してみる。
だけど、差出人には何も書かれていなくて。


ちょっとだけ震える指先でなんとか封を切ると、一枚の紙を取り出した。


中身は……。






「……やだ。 ラブレターじゃん?」

「うッ、うそ! なんであたし!?」



一緒に中を覗き込んでいた奈々子が、ニヤッと笑うとあたしの肩をツンとつついた。